エリス先生の講演に参加して、「緩やかな演繹法」を思い出した。

2月15日に関西大学で行われたエリス先生の講演に参加してきました。
SLAの重鎮は赤い服が似合うなーと感心しながら講演始まり。

    • 1st session: The Definition and Measurement of ‘Second Language Acquisition’
    • 2nd session: The Significance of the Implicit versus Explicit Distinction for Language Pedagogy


内容的には特に新しいことはなかったので、私にとっては良い復習の機会となった。
1st sessionは理論面の説明のみで、ぶっちゃけ良い感じの部屋の暖かさと統計結果の説明で瞼が勝手に降りてきた(耐えたけど)。
一方、 2nd sessionは理論をもとにした実践を考えてみようという進行だったので凄く楽しかった。
やっぱ自分は実践で試したくてウズウズしてるんだな(・∀・)

  • Consciousness-raising taskの可能性

ネタバレかもしれないけどエリス先生の今回の講演の2nd session の結論は
「明示的vs暗示的って極端に考えるんじゃなくて、要は2つのバランスね(・∀・)」
ってこと。

「結局そっか(´・ω・`)」って思ったけど、このバランスって第二言語の指導者として忘れてはいけないことだし、(多分自分にとって)永遠の課題になるんじゃないかなと思った。

で、そのバランスを考慮して最後に紹介されたのがConsciousness-raising task

Consciousness-raising (CR) task ってなんぞ?配られたハンドアウトを引用すると

    1. A specific linguistic feature is isolated for focused attention
    2. the learners are provided with data which illustrate the target feature
    3. the learners are asked to perform one or more operations on the data
    4. the learners are expected to utilize intellectual effort to understand the target feature
    5. the learners may optionally be required to verbalize a rule describing the target feature

ざっくり言うと「学習者に、ある言語形式を発見させる(気づかせる)」方法。
つまり「指導者はさりげなく(やや暗示的に)言語形式を教えながら、明示的知識(文法ルールなど)を学習者自らが発見する」というもの。



大学院時代の課題でTask-Based Language Teachingを扱ったとき、CR taskは心に引っかかっていた。
Fotos(1993)の文献を読んで日本人を対象にCR taskを実践していたので、将来絶対使えるはずと思ってたけど、今さらこのタスクのおもしろさに気づく。まー明示的、暗示的〇〇を理解してないとおもしろさに気づかなかったんだろうけどさ。
ちょっと引っ張り出してきて時間ある時に読みなおさないと。

  • 「緩やかな演繹法」は自分の理想に近いぞ!?

CR taskが紹介されて、ふと思い出したことは池上彰さんの「伝える力」で紹介されている「緩やかな演繹法」っていう考え方だった。

CR taskってMohamed(2004)は「演繹的」と「帰納的」を両方論じてあるけど、私的にはEllis先生のどっちも演繹、帰納どちらも含んでるという主張に賛成。
こういう2つのバランス考慮したときに池上彰さんの「緩やかな演繹法」って言い得て妙だなーと感心した。


池上さんはジャーナリストがフィールドワークすることを例にとって「緩やかな演繹法」の効用をこう説明している。

 何もない白紙の状態から調査して、文書をまとめるのは、文字通りゼロから積み上げるわけですから、大変な手間と時間がかかります。
 しかし、仮説を立てて現場に臨めば、たとえ仮説とは状況が大きく異なっていても、土台があるので、軌道修正をすれば、対応は比較的容易にできるのです。
 つまり、白紙の状態で調査を開始するよりも、効率はずっとよいといえます。(p.115)

これを、かーーーーーなり強引に(私的に)SLAとくっつけると

 何もない白紙の状態から調査して、a new target language feature を与えるのは、文字通りゼロから積み上げるわけですから、大変な手間と時間がかかります。
 しかし、information gapを与えて臨めば、たとえ>pushed outputとは状況が大きく異なっていても、土台があるので、notice and modify をすれば、対応は比較的容易にできるのです。
 つまり、白紙の状態でexplicit instructionを開始するよりも、効率はずっとよいといえます。

まぁ現実的にクラスルームでできるかどうかは置いといて、これがスムーズにできるようになるのが自分の理想なんですよね(*´Д`)
(ツッコミどころ満載なのでツッコんでいいっすよ(;´∀`))


大切なことはメソッドをガチガチに固めるのでなく、指導者が自分なりの信念(〇〇アプローチでもなんでもいいじゃん)を持って柔軟に対応していくことなんじゃないすかね。
この柔軟に対応するって意味で、エリス先生のスタンスは非常に好感が持てたな。



エリス先生も言ってたけど
UseとProduceは一緒じゃないよ( ´∀`)bグッ!」って言ってたからちゃんとProductionに繋がるtaskをしかけなきゃいけないんだよな〜。
あと「Uptake chart」ってのも自分なりに考えてみようかな〜。
あー勉強せんといかんな、こりゃ。


まずはCR taskとEFL coursebookの関係を考察してるNitta and Gardner(2005)から読み直します。


※ CR taskの基本的知識はWillis and Willis (1996)にあるんですけど、ググったら出てきました。
  
指摘あるならコメントくださいね。

References

池上彰(2007) 伝える力「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える! PHPビジネス新書 

Fotos, S. (1993). Consciousness raising and noticing through focus on form: Grammar task performance versus formal instruction. Applied Linguistics, 14, 386- 407.

Mohamed, N. (2004). Consciousness-raising tasks: a learner perspective. ELT journal, 58/3, 228-237.

Nitta, R. and Gardner, S. (2005). Consciousness-raising and practice in ELT coursebooks. ELT Journal, 59, 3-13.